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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和63年(ネ)102号 判決 1989年9月18日

主文

一  本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人(附帯被控訴人)の、附帯控訴費用は、被控訴人(附帯控訴人)の各負担とする。

事実

第一  申立

一  控訴人(附帯被控訴人、以下「控訴人」という。)ら

(控訴の趣旨)

1 原判決中控訴人ら敗訴部分を取り消す。

2 被控訴人(附帯控訴人)の請求を棄却する。

3 訴訟費用は第一、二審とも被控訴人(附帯控訴人)の負担とする。

(附帯控訴に対する答弁)

1 本件附帯控訴を棄却する。

2 附帯控訴費用は、附帯控訴人(被控訴人)の負担とする。

二  被控訴人(附帯控訴人、以下「被控訴人」という。)

(控訴の趣旨に対する答弁)

1 本件控訴をいずれも棄却する。

2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

(附帯控訴の趣旨)

1 原判決を次のとおり変更する。

2 控訴人らは被控訴人に対し、各自金五〇万円及びこれに対する控訴人竪山明は昭和六一年三月一四日から、控訴人新野尾文雄は同年二月二五日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事実及び証拠関係

当事者双方の主張は、次のとおり附加訂正するほかは原判決事実摘示のとおりであり、証拠の関係は原審及び当審における書証目録、証人等目録記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決五枚目表一行目末尾に「そしてこの理は、離脱を命じられたバッジが仮に控訴人らが主張する「夏期用バッジ」であるとしても何ら変わらない。」と附加する。

2  同六枚目表九行目「二二日は」を「控訴人新野尾が控訴人竪山と共同して右作業をさせたこと及び二二日に降灰除去作業に従事させたことは」と訂正し、同行末尾に「控訴人新野尾は、鹿児島営業所の首席助役として所長である控訴人竪山を補佐し営業所の助役を統括することを任務としており、本件について後記のとおり、だらしない格好をしていた被控訴人にその旨注意したに過ぎず、控訴人竪山と共同して降灰除去作業を督励したことはない。」と附加する。

3  同九枚目裏四行目と五行目の間に「また、被控訴人が命ぜられ従事した降灰除去作業は、作業量等その実態において過酷なものといえず、社会的に相当な枠を逸脱するものではない。」と附加する。

理由

一  当裁判所も被控訴人の本訴請求は、原判決認容の限度で理由があるものと判断するが、その理由は次のとおり附加訂正する。ほかは、原判決理由説示のとおりであるからこれを引用する。

1  原判決一〇枚目表五行目「原告本人」を「原審及び当審における被控訴人本人」と、同七行目「被告竪山本人」を「原審における控訴人竪山、当審における控訴人ら各本人」と訂正する。

2  同八行目から一三行目までを「また原審証人松尾文章の証言、原審及び当審における控訴人ら各本人尋問の結果(一部)、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果、並びに弁論の全趣旨によると、控訴人竪山は、自動車部から国労バッジ離脱命令に従わない者に対しては本来の業務から外すよう指示を受けていたが、その場合に本来の業務に替えて如何なる作業に従事させるべきかについてはなお決定すべき権限を有していたこと、控訴人新野尾は鹿児島営業所の首席助役であり、所長を補佐し、営業所の助役を統括する立場にあったこと、同営業所の田中助役は後記認定のとおりハンドマイクを携帯して被控訴人の本件作業を監視していたほか、控訴人新野尾も、巡視の際被控訴人に作業を励行するよう注意を与えるなどしていること、以上の事実が認められ、これによると被控訴人を本件降灰除去作業に従事させるについては、所長である控訴人竪山、首席助役である控訴人新野尾ほか助役ら管理職においてある程度の協議検討がなされていたものと推測することができる。そして右のとおり控訴人新野尾が被控訴人に対し作業を励行するよう注意していることを併せ考慮すると、控訴人新野尾は控訴人竪山と共同して被控訴人に本件降灰除去作業を行わせたものということができ、したがって、本件業務命令及びその実施の態様が権限の濫用等により不法行為を構成する場合には、控訴人新野尾も共同不法行為としてその責任を免れないものというべきである。」と訂正する。

3  同一三枚目裏八行目「証言」を「証言、及び、原審及び当審における被控訴人本人尋問の結果」と訂正する。

4  同一六枚目表一二行目「作業方法」の次に「及び本来の業務との比較衡量」と附加し、同一四行目から同裏一行目の「何ら合理的理由もなしに」を「必要性及び相当性の範囲を越えて」と訂正する。

5  同一七枚目表六行目「対して」を「対してのみ」と、同七行目「言うべきである。」を「言うべきであり、これに反する前掲各控訴人ら本人尋問の結果は採用できない。」と、同一一行目「のように」を「のような程度、態様において」と「同裏七行目「合理的理由」を「一応の合理的理由」と、各訂正し、同九行目「その違法性」の前に「右バッジ着用が労使間の対立を日常業務の中に恒常的に顕在化させるものであるとはいえ、その業務阻害性の面においては低いものであることを考慮すると」と附加する。

6  同一八枚目表四行目「明らかである。」を「明らかであるし、前述のとおり、被控訴人に対し本来の業務に替えていかなる業務に従事させるかについては、仮に自動車部からの示唆があったとしても、控訴人竪山はその実施及び実施の態様についてはなおこれを決定すべき権限を有しているのであるから、控訴人らの右主張は採用できない。また控訴人らは本件降灰除去作業がその作業量等から相当であった旨主張するが、これが失当であることは前述のところから明らかである。」と訂正する。

二  よって、原判決は相当で、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 野田殷稔 裁判官 澤田英雄 裁判官 郷 俊介)

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